AI CASE
ClaudeとChatGPT、全社で入れるならどちらか——7社の公表例で見る選び方

※ 本記事で紹介する事例は、各社が公表している情報をもとにまとめたものです。当社が支援した事例ではありません。 当社の実績については記事末尾をご覧ください。
「社内でAIを入れることになりました。ClaudeとChatGPT、どちらにすればよいのでしょうか」
研修のご相談で、最初によく聞かれる問いです。性能の比較は、新しいモデルが出るたびに入れ替わります。
そこで今回は、全社に入れた会社が自ら公表した記録を7社分集め、何を選び、どう使い分け、どこでつまずいたかを並べました。
この記事の要点
- 7社のうち6社が、全社に入れたAIのほかにも複数のAIを併用・使い分けていると自ら書いています。複数のAIの併用に触れていないのはNECだけでした
- 社員に選ばせたGMOインターネットグループでは、2026年6月の調査で、日常利用するサービスの利用率でClaudeがChatGPTをわずかに上回りました
- 各社とも、選んだあとの「使われるか」「費用が膨らまないか」を課題に挙げています
7社の公表例
MIXI(ChatGPT Enterprise・約2,000人)
2025年3月に、ChatGPT Enterpriseを全従業員に導入しました。アルバイトや派遣、業務委託の社員も含め、2025年4月時点で約2,000人です。個人向けのChatGPT Plusの利用料補助は、同じ月に終えています。
出典:MIXI、ChatGPT Enterpriseを全従業員に導入(2025年4月15日) — MIXI
導入から3か月ほどで、週に1回以上使う人の割合(WAU)は80%、月に1回以上使う人の割合(MAU)は90%を超えました。業務時間の削減は月間約17,600時間(1人あたり月約11時間)です。これはアンケートの回答を選択肢の下限値で集計し、アクティブユーザー1,600名に当てはめて算出した試算です。同社も「見込む」と書いています。ChatGPT Enterpriseに加えて、複数の生成AIツールも使っているとしています。
出典:MIXI、ChatGPT Enterpriseの全社活用で月間約17,600時間を削減(2025年8月21日) — MIXI
LINEヤフー(ChatGPT Enterprise・約11,000人)
2025年6月から、全従業員約11,000人にChatGPT Enterpriseのアカウントを配っています。特徴は、必須のeラーニング研修を受け、試験に合格することを利用の条件にした点です。今後3年間で業務生産性を2倍にすることを目標にしています。
出典:全従業員約11,000人を対象に「生成AI活用の義務化」を前提とした新しい働き方を開始(2025年7月14日) — LINEヤフー
同社は複数のAIベンダーを使う「マルチベンダー戦略」を取っています。検索エンジンの最適化にはGoogleのモデル、資料作成にはOpenAIのモデルという使い分けです。期待どおりの成果が出ているかという問いに、生成AIを統括する役員は「まだですね」と答えています。バックオフィスの業務は導入が難しいと感じることもあったそうです。
出典:「AIをパートナーとして共に成長する」生成AI役員、宮澤が描く未来(2025年7月14日) — LINEヤフー
NEC(Claude・約3万人)
2026年4月に、NECグループ約3万人の従業員を対象にClaudeを導入すると発表しました。開発用のClaude Codeなども使います。こちらは全従業員ではなく、AIを前提に開発するエンジニアの体制づくりが目的です。
出典:NEC、Anthropic とエンタープライズAI分野を中心に戦略的協業を開始(2026年4月23日) — NEC
2026年7月の社長の対談記事では、6月からグループ内への展開が始まり、利用者が増えていると話しています。選んだ理由には、安全と安定の面で優れていると考えたことを挙げています。利用率などの数字はまだ公表されていません。
出典:「最強のClaude集団」が創るAIの未来 AnthropicとNECが協業(2026年7月16日) — NEC Stories
KDDIアジャイル開発センター(Claude Enterprise・全職種)
2026年6月に、Claude Enterpriseを全社に入れました。エンジニアだけでなく、経営層、人事、マーケティング、デザインのチームも含めた全職種が対象です。GitHub Copilotなど複数のAIツールも使い続けるとしています。人数や効果の数字は公表されていません。
出典:AIエージェント「Claude Enterprise」を全社導入(2026年6月1日) — KDDIアジャイル開発センター
パナソニック コネクト(3社のモデルを自社のAIでまとめる)
国内全社員約11,600人が使う社内のAIアシスタントを、OpenAI、Google、Anthropicの3社のモデルを使って自社で作っています。目的の1つには、会社が把握していないAIを社員が使う「シャドーAI」のリスクを減らすことを挙げています。
2024年の業務時間の削減は44.8万時間でした。全社員で割ると、1人あたり年約39時間です。月間で使った人の割合(月間ユニークユーザー率)は49.1%で、前年から14.3ポイント上がったものの、まだ半分ほどです。
出典:「聞く」から「頼む」へシフトしたAI活用で年間44.8万時間の削減を達成(2025年7月7日) — パナソニック
サイバーエージェント(開発者がClaude CodeとCodexを選ぶ)
2025年6月に、開発に携わるエンジニア約1,200名に、1人あたり月額200米ドルの開発AIエージェント費用を補助すると決めました。年間約4億円の投資です。どのツールを使うかは、社員が業務に応じて選べます。
出典:開発AIエージェント導入に年間約4億円を投資決定(2025年6月19日) — サイバーエージェント
1年後の振り返りでは、Claude CodeとCodexのライセンス数と利用トークン数が大きく増え、GitHub Copilotのコード補完の回数は約75%減ったと書いています。一部の組織で開発量が約2倍になった例も挙げていますが、「全社平均値を示すものではありません」と断っています。課題として、投資規模が当初の計画を大きく超えたこと、レビュー工程の負荷、コスト拡大とのバランスを挙げています。
出典:数字で振り返る、開発AIエージェント導入支援から1年(2026年7月9日) — サイバーエージェント
GMOインターネットグループ(社員に選ばせ、利用率を公表)
2025年5月に、社員が業務に応じて生成AIを自由に選べる補助制度を作りました。1人あたり月最大1万円が目安です。ツールによって「できることとできないことが異なる」ため、複数を比べて併用することを勧め、データを取られるリスクが高いAIは対象から外しています。
出典:AI人財の支援に年間約10億円を投資「GMO AIブースト支援金」を創設(2025年5月19日) — GMOインターネットグループ
2026年2月には、全パートナー約8,000人を対象に、Claudeの活用のため最大11.5億円の追加投資を決めました。単純に1人あたりに割ると、最大約14万円です。トークン消費量の増加や上位プランへの移行コストが新たな課題だとも書いています。
出典:Claudeの急進化に即応し最大11.5億円を追加投資(2026年2月17日) — GMOインターネットグループ
2026年3月の社内調査では、ChatGPTの利用が減り、Claudeが約2倍に増えたと公表しました。同じ資料には、AIがデータ移行中に項目を勝手に削除し、本番のデータが消えた失敗例も載っています。6月の調査(回答者5,621人)では、日常利用する生成AIサービスはClaudeが73.4%、ChatGPTが72.3%、Geminiが64.3%でした。
出典:AIエージェント業務活用率が約7割に急伸、月間35.2万時間の業務削減を実現(2026年4月9日) — GMOインターネットグループ/ClaudeがChatGPTを抜き利用率トップに(2026年6月30日) — 同
7社に共通していたこと
1. 「どちらか1つ」に決めきった会社は少数でした
MIXI、LINEヤフー、KDDIアジャイル開発センターは、全社に入れたAIのほかにも別のAIを使っていると書いています。パナソニック コネクトは3社のモデルを自社のAIの中でまとめ、GMOは社員に選ばせています。問いは「どちらか」より「何にどれを使うか」に移っています。
2. 全社用と開発用を分けて考えています
NECとサイバーエージェントは、開発向けのAIを、対象のエンジニアを決めて入れています。開発向けは1人あたりの費用が高く、使うほどトークンの費用も増えます。
3. 選んだあとの「使われ方」を追っています
MIXIのWAU・MAU、パナソニック コネクトの49.1%、GMOのサービス別の利用率は、どれも導入後の数字です。LINEヤフーが試験合格を条件にしたのも、配るだけでは使われない前提に立っているからだと私たちは読んでいます。
法人向けプランのデータの扱い
まず確かめたいのはデータの扱いです。OpenAIは、ChatGPTの法人向けプラン(Business・Enterprise)について、既定ではユーザーのデータをモデルの学習に使わないと公式に書いています。Anthropicも、Claudeの商用製品(Team・Enterpriseなど)からの入力と出力を、既定ではモデルの訓練に使わないとしています。
出典:OpenAI におけるエンタープライズプライバシー — OpenAI/私のデータはモデルトレーニングに使用されていますか?(商用製品) — Anthropic Privacy Center
※ 個人向けのプラン(ClaudeのFree・Pro・Maxなど)では、利用者が許可を選んだ場合に会話が学習に使われ、設定は利用者に任されます。個人向けプランを補助する形で入れるなら、社内ルールで設定をそろえる必要があります。
出典:私のデータはモデルトレーニングに使用されていますか?(個人向け) — Anthropic Privacy Center
数字を読むときの注意
削減時間の多くは、アンケートからの試算です。 MIXIの月間約17,600時間は、回答を下限値で集計して当てはめた試算です。GMOの1人あたり月約65.1時間も、社内調査の回答にもとづく数字です。実際に計った労働時間の減少とは分けて読んでください。
利用率の測り方が違います。 MIXIは週・月のアクティブ率、パナソニック コネクトは月間ユニークユーザー率、GMOは「日常利用する」と答えた人の割合です。並べて比べることはできません。
計画と実績を分けてください。 NECの約3万人は導入の対象者数、LINEヤフーの生産性2倍は目標で、達成した数字ではありません。
自ら公表した記録です。 導入をやめた例や、公表されなかった例は含まれていません。
自社ではどう読むか
7社の記録から、私たちは選ぶ前に次の3つを決めておくことをおすすめします。
1つめは、全社用と開発用を分けて決めることです。 全社員が資料づくりに使うツールと、エンジニアが開発に使うツールでは、費用の構造も求める機能も違います。サイバーエージェントの投資が当初の計画を超えたのは、開発用のツールでした。
2つめは、「1つに決める」ことにこだわりすぎないことです。 GMOの調査が示すように、社員がよく使うAIは1四半期で入れ替わることがあります。管理は1つにそろえるほうが楽ですが、乗り換えや併用ができる契約と社内ルールにしておくと、変化に合わせやすくなります。
3つめは、何をもって「使われている」とするかを、導入の前に決めることです。 パナソニック コネクトは、利用開始から約2年たった2024年でも、月の利用者が半分ほどでした。どちらのAIを選んでも、業務に結びつかなければ使われません。研修の題材を自社の業務にすることと、導入後に利用率を測ることを、選定とセットで計画するのが現実的だと考えます。
※ 記載の数値は各社の公表時点のものです。各社のプランの内容や料金、データの扱いは変わることがあるため、契約前に提供元の最新の案内をご確認ください。
※ 本記事で紹介する事例は、各社が公表している情報をもとにまとめたものです。当社が支援した事例ではありません。
どのAIを入れるかより、入れたあとに使われるかが分かれ目です。自社の業務に合わせた研修と、使われ続ける仕組みづくりを、レベルゼロが伴走します。
AI研修サービスについて相談する →