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AI CASE

各社の公式発表・厚生労働省ほか活用事例

AI研修とは——7つの公表例で見る中身・時間・費用と、選ぶときの3つの観点

AI研修 7つの公表例——白地に、机の上のノートパソコンから線がのび、書類・棒グラフ・チェックリストにつながっていくフラットな図解

※ 本記事で紹介する事例は、各社が公表している情報をもとにまとめたものです。当社が支援した事例ではありません。 当社の実績については記事末尾をご覧ください。

「AI研修を検討するように言われました。でも、何を、何時間くらい、誰に教えるものなのでしょうか。費用の相場もよく分かりません」

人事や経営企画の方から、こう聞かれることが増えました。研修会社の案内はどれも自社の研修の説明なので、比べる物差しがないまま選ぶことになりがちです。

そこで今回は、企業と自治体が自分で公表している研修の記録を7つ集めました。研修の中身、時間、対象、そして研修のあとに何が起きたかを並べています。費用については、厚生労働省の資料から分かることを書きます。

この記事の要点

  • AI研修に公的な定義はありません。経済産業省などの「デジタルスキル標準」は、全てのビジネスパーソンに生成AIを使うときの心構えを求めています
  • 7つの例では、全員に短い基礎研修を受けてもらい、その先は職種や意欲に合わせて分ける形が多く見られました
  • 研修を実施した側が自ら、「最後まで受け入れてくれなかった社員がいた」「利用が低調だった」と課題を公表しています
  • 厚生労働省の助成金は、2026年8月3日以降に出す計画から、業務に直接つながらない汎用的なプロンプト研修を対象外にしました

AI研修とは何か

AI研修という言葉に、公的な定義はありません。近いものとして、経済産業省とIPAの「デジタルスキル標準」があります。全てのビジネスパーソンに求める内容のなかに、2023年8月に「生成AI利用において求められるマインド・スタンス」が補記されました。

そこには、生成AIを「問いを立てる」「仮説を立てる・検証する」といったスキルと掛け合わせて使うこと、著作権の侵害や情報漏洩に注意すること、変化を「いとわず学び続けている」ことが挙げられています。2026年4月のver.2.0でも、この補記はそのまま残っています。

出典:デジタルスキル標準 ver.2.0(2026年4月) — 経済産業省・IPA

AI研修の中身は、ツールの操作だけではないということです。

7つの研修の公表例

トヨタコネクティッド(全社員必須・当初2時間)

トヨタ自動車のグループ会社です。社員を5つのレベルに分け、レベル1と2は全社員が達成できるように設計し、レベル3は選択必修にしています。研修は当初、1時間の座学と1時間のハンズオンの計2時間でした。長い座学のあとに手を動かすのは負担が大きいため、途中にミニハンズオンを挟む形に変えています。

研修担当者は、取り組み当初に約40%だった利用率が、週1回以上AIを使う社員で全体の約8割になったと話しています。業務時間を週30分以上削減できたと答えた社員は7割近くでした。

課題もはっきり書かれています。最大のハードルは「強制参加ゆえの心理的抵抗感」で、「一部の社員は最後まで受け入れてくれませんでした」とあります。全社研修なので「最大公約数的な研修」になりやすく、期待とのずれが出たことも挙げています。

出典:生成AI研修の裏側とこれから【前編】(2025年10月14日) — トヨタコネクティッド 公式note

ソフトバンク(全社員・2か月半)

2025年6月に、全社員が1人100個のAIエージェントを作ることを目標にした取り組みを始めました。eラーニングで基礎知識を学び、セミナーで作り方を学ぶ形です。期間は8月末までの約2か月半で、250万を超えるAIエージェントが作られたとしています。

終了後のアンケート(回答者9,207名)では、約9割が生成AIへの理解が深まったと答えています。社員からは「数を作ることに集中してしまったので、今後は質の高いものを作りたい」という声も紹介されています。

出典:わずか2カ月半で250万超のAIエージェントを作成。全社員が身につけた“AIを使うチカラ”(2025年12月4日) — ソフトバンクニュース

住友商事(約9,000人に配布・部門で基礎編と応用編)

2024年4月に、海外グループ会社を含む約9,000人がMicrosoft 365 Copilotを使い始めました。同社は、よくある「ゴールデンプロンプト」を配る方法を取らず、社員が自分で使いどころを考えられるようにすることを目指したとしています。

ある事業ユニット(約50名)では、2024年12月に研修を2回開いています。1回目は全員参加必須の「基礎編」、2回目は自由参加の「応用編」でした。デジタルツールに不慣れな人には「少なからず抵抗感があった」と書かれています。

2025年10月時点で月間アクティブユーザーは約90%です。推進担当者は「この数字に満足していません」と述べています。

出典:コスト削減効果は年間約12億。住商の「生成AI活用」最前線(2025年11月4日) — 住友商事 Enriching+

NTTデータグループ(段階制・7万人が修了)

生成AIの人材を4つの段階に分けて育てています。最初の段階にあたる基礎研修では、基本的な知識や活用方法を教え、あわせてAIガバナンスやセキュリティ、リスク管理の順守も教えているとしています。

実務で使える段階の人材は、当初の目標だった「2026年度末までに3万人」を超え、2025年10月時点で7万人に達しました。今後は、2027年度までに全社員約20万人へ広げる計画です。

出典:実践的な生成AI人財育成を2027年度までにグローバル全社員へ拡大(2025年10月29日) — NTTデータグループ

大和証券グループ(全社員必修・動画と確認テスト)

全社員向けの枠組みのなかで、AIリテラシー研修を必修にしています。形式は動画研修で、受講後に理解度確認テストを行っています。2025年度から定期的に実施しており、グループ全社員が対象で「ほぼ全員が受講しています」と公表しています。

出典:AIガバナンス — 大和証券グループ本社

愛知県尾張旭市(説明会の前後で利用が約1.89倍)

2023年8〜9月に、200アカウントで生成AIを試しました。このうち130アカウント(65.0%)は、期間中に1回も使われませんでした。市は報告書で、課題として「利用自体が低調であった」と書いています。

そこで職員向けの説明会を開いてから、12月に2回目の試行を行いました。1日あたりの利用回数は19.3回から36.4回へ、約1.89倍になっています。職員からは「何をするために何を入力すればよいか困ってしまいました」という声も出ていました。

出典:生成AI 試行利用結果報告書(令和5年10月) — 尾張旭市/同(令和6年3月)

大阪府泉大津市(研修後に使った人が80%)

2024年9月から2025年3月までの実証実験で、外部講師による職員向けの生成AI活用研修を行い、その後にアンケートを取っています。研修後に業務で生成AIを使ったと答えた人は、回答者117名のうち94人(80%)でした。

使わなかった23人のうち、19人の理由は「利用する機会・案件がなかった」です。職員が求めたものとしては、「質問の仕方についての研修」や具体的な使用例が挙がっています。

出典:株式会社グラファーとの「生成AI導入による行政業務効率化」に関する実証実験結果について(2025年3月5日更新) — 泉大津市

7つの例に共通していたこと

1. 全員向けは短く、その先は分けています

トヨタコネクティッドは当初2時間、大和証券は動画と確認テストでした。全員に求めるのは、安全に使うための基礎までです。その先は、トヨタコネクティッドが選択必修、住友商事の部門が自由参加の応用編、NTTデータが段階制というように、職種や意欲に合わせて分けています。

2. 研修だけでは使われない、と自ら書いています

尾張旭市の65%が1回も使わなかったことや、泉大津市の「利用する機会・案件がなかった」は、業務と結びつかなければ使われないことを示しています。トヨタコネクティッドの担当者も、こちらから使い方を示しても「カチッとヒットする人は意外と少ない」と話しています。

3. 研修のあとの数字を追っています

利用率、アクティブユーザー、アンケートなど、7つの例はどれも研修の「あと」を測っています。受講者数で終わらせていないから、課題も自ら書けているのだと考えます。

費用について、公表情報で分かること

研修会社の料金は各社が個別に決めており、公的な「相場」はありません。今回の7つの例でも、研修費用の実額を公表しているところはありませんでした。

参考になる数字は2つあります。1つは、厚生労働省の「能力開発基本調査」です。社外での研修(OFF-JT)に費用を出した企業の、労働者1人あたりの平均額は、2024年度で2.0万円でした。AI研修に限らない、研修全体の平均です。

出典:令和7年度 能力開発基本調査 結果の概要(2026年7月31日) — 厚生労働省

もう1つは、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)です。中小企業は研修経費の75%、大企業は60%が助成され、受講中の賃金も1人1時間あたり中小企業1,000円、大企業500円が助成されます。実際の訓練時間が10時間以上であることが条件で、2026年度末までの期間限定の制度です。

出典:人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版) — 厚生労働省

注意したいのは、2026年8月3日以降に出す計画から、対象となる研修の線引きが変わったことです。厚生労働省は、助成の対象外になる例として「生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練」を挙げています。対象になる例は、営業担当者が生成AIで商品提案書の構成案を作る方法を学ぶ訓練です。

出典:令和8年8月3日からの変更点について — 厚生労働省

国の制度も、「業務に直接つながる研修か」を問う形に変わっています。これは、7つの例が示した「業務と結びつかないと使われない」という課題と同じ方向を向いていると私たちは読んでいます。

数字を読むときの注意

利用率の数字は、測り方がそれぞれ違います。 トヨタコネクティッドの約8割は「週1回以上」、住友商事の約90%は「月間アクティブユーザー」です。同じ「利用率」でも、比べることはできません。

アンケートは回答者の中の割合です。 泉大津市の80%は回答者117名のうちの割合で、全職員の割合ではありません。ソフトバンクの約9割も、回答者9,207名のうちの割合です。

研修だけの効果とは限りません。 どの例も、ツールの配布やルールづくりと同時に研修を行っています。利用率の伸びを、研修だけの成果として読むことはできません。

自ら公表した記録です。 うまくいかずに公表されなかった研修は、ここには含まれていません。

研修を選ぶときの3つの観点

7つの例と厚生労働省の線引きから、私たちは研修を選ぶときに次の3つを確かめることをおすすめします。

1つめは、自社の業務を題材にしているかです。 汎用的なプロンプトの書き方だけで終わる研修は、尾張旭市や泉大津市の例のように「何に使えばよいか分からない」で止まりやすくなります。助成金の対象からも外れます。自社の書類や業務の流れを使う研修かどうかを、事前に聞いてください。

2つめは、全員向けと、その先が分かれているかです。 全員向けの基礎は短く、そのあとに部署ごと、職種ごとの研修を置く形が、7つの例では多く見られました。1回の研修で全員を同じところまで連れていこうとすると、トヨタコネクティッドが書いた「最大公約数的な研修」になりやすくなります。

3つめは、研修のあとに何を測るかが決まっているかです。 受講者数ではなく、研修後にどれだけ使われたかを、いつ、どう測るか。そこまで研修の設計に含めている会社を選ぶと、研修が「受けて終わり」になりにくいと考えます。

時間については、今回の例で1回の研修時間まで公表していたのは、トヨタコネクティッドの当初2時間だけでした。助成金を使う場合は実際の訓練時間が10時間以上であることが条件になるため、全員向けの基礎と業務別の研修を組み合わせて計画するのが現実的だと考えます。

※ 記載の数値は各資料の公表時点のもので、研修以外の取り組みの効果を含む場合があります。助成金の要件は変わることがあるため、申請前に厚生労働省または都道府県労働局の最新の案内をご確認ください。

※ 本記事で紹介する事例は、各社が公表している情報をもとにまとめたものです。当社が支援した事例ではありません。

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