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AI CASE

中小企業白書・経済産業省ほか活用事例

中小企業のAI導入事例7社——何から始めたか、費用はどこまで分かるか

中小企業 7社の始め方——白地に、小さな建物の前で1枚の書類から線が伸び、7つの小さな四角につながっていくフラットな図解

※ 本記事で紹介する事例は、各社が公表している情報をもとにまとめたものです。当社が支援した事例ではありません。 当社の実績については記事末尾をご覧ください。

「大企業の事例は分かりました。でも、うちは社員50人です。何から始めて、いくらかかるものなのでしょうか」

中小企業の経営者の方から、こう聞かれることが増えました。公表されている事例の多くは大企業のもので、情報システム部門があり、専任の推進担当がいる前提で書かれています。

そこで今回は、従業員26〜109名の7社に絞って、公的機関の資料に載っている事例を並べました。7社とも、最初に手をつけたのは毎日または毎月必ず発生する書類の仕事でした。 一方で、読者の方がいちばん知りたい「いくらかかったか」は、どの社も実額を公表していません。この記事では、そのことも含めて整理します。

この記事の要点

  • 中小機構の調査では、AIを導入している中小企業は20.4%です。導入を妨げる要因の1位は「導入にあたっての高コスト」(46.9%)でした
  • 中小企業白書は、AIを使っていない理由で最も多いのは「活用する業務がイメージできていない」だとしています
  • 7社は、月末の報告書、請求書、検査の記録、英語資料の読み込みなど、必ず発生する書類仕事から始めています
  • 費用の実額を公表している会社はありませんでした。岡田研磨は、外注すれば約8,000万円かかるシステムを「AIの月額利用料のみ」で内製したとしています

まず、全体の数字を見ます

独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が2025年11〜12月に行った調査では、AIを「全社的に導入している」「一部の業務で導入している」と答えた中小企業は、合わせて20.4%でした。導入している企業のうち、82.6%が生成AIを使っています。

導入にあたって感じている課題は、「導入にあたっての高コスト」が46.9%で最も多く、「社内のAIノウハウ不足」42.0%、「社内のAI人材不足」38.8%と続きます。

出典:中小企業のAI等の利活用に係る実態調査 ポイント版(2026年3月) — 中小機構/同 報告書

2026年版の中小企業白書は、AIを業務で使っていない理由として、「活用する業務がイメージできていない」という回答が最も多かったとしています。同じ白書は、従業員向けの研修会や勉強会に取り組んでいる事業者のほうが、「想定した効果が得られた」と答える割合が高いことも示しています。

出典:2026年版 中小企業白書 第2部第2章第2節 — 中小企業庁

費用が壁だと感じている会社は多いのですが、使っていない会社の多くは、その手前の「何に使うか」で止まっていることになります。以下の7社は、そこをどう越えたのかという例です。

7社が公表していること

岡田研磨(石川県・金属製品製造・85名)

建設機械や産業機械の部品を加工する会社です。2020年ごろは、図面などの情報を紙とExcelで管理しており、資料を探すのに1〜2時間かかることもあったそうです。

2023年末に、専務が生成AIでプログラムが作れることを知り、社内のアプリを自分で作る方針を決めました。約2年で延べ1,000時間以上をAIとの対話に使い、検査実績、品質報告、在庫、生産進捗などをまとめた約30種類以上のアプリを作っています。その結果、月530時間程度の労働時間を削減したとされています。

白書には、自作アプリを入れる際に「従業員からの抵抗もあった」と書かれています。各部門の若手でDX推進チームをつくり、まずチームが試してから全社に広げたそうです。

出典:2026年版 中小企業白書 事例2-2-14 — 中小企業庁

オプトサイエンス(東京都・光学機器の輸入商社・33名)

扱う製品の専門性が高く、営業担当者が英語の論文やマニュアルを読み込んで、自分で技術解説を書く必要がありました。

社長が2023年1月に対話型の生成AIを初めて使い、同じ年に導入しています。社長自らがあらゆる業務で試し、プロンプトの書き方の勉強会も開きました。論文の要約や英語マニュアルの翻訳から始め、業界誌の広告づくりにも広げています。広告からの問い合わせは、以前は月平均5件程度でしたが、多い月には45件になったとされています。

生成AIの出した情報については、必ずファクトチェックを行うことを徹底しているそうです。

出典:2026年版 中小企業白書 事例2-2-3 — 中小企業庁

プーラビダ(福岡県・訪問看護・26名)

北九州市の訪問看護ステーションです。離職率の高さをきっかけにDXに取り組みました。

看護師の負担が最も大きい報告書の作成を、生成AIを使った自社のプラットフォームで支援しています。報告書の作成時間は1時間から5分に、報告書の郵送手配は2時間から3分になったとされています。離職率は83.3%から7.7%に下がりました。

出典:DXセレクション2026 レポート(2026年6月) — 経済産業省

ヒューマングループ(長崎県・自動車教習所ほか・53名)

30年使っていた社内システムをクラウドに移し、チャットに業務を集めたことが出発点です。そのうえで、社員一人ひとりにAIアシスタントを置く「一人一ボット体制」をつくりました。

経営者が率先してIT資格の取得やAI開発のスキル習得に取り組んだと書かれています。会議時間は75%、社内の電話は90%減ったとされています。

出典:DXセレクション2026 レポート(2026年6月) — 経済産業省

エヌエスケーケー(兵庫県・携帯電話販売代理店・61名)

社長直轄のDX推進チームを置き、全社員が生成AIを使える環境を整えました。

特徴は、社内の勉強会で月に1回、全部署に生成AIを使った改善成果の報告を義務づけていることです。成功例や使い方は全社に共有されます。成果として、請求書の処理で月275分、営業提案書の作成と引き継ぎで月300分の削減が挙げられています。

出典:DXセレクション2026 レポート(2026年6月) — 経済産業省

川六(香川県・ビジネスホテル・68名)

経理業務の自動化から入り、2023年からはAIによる業務改革に取り組んでいます。社内のデータをAIに読み込ませた仕組みを「KAWARAG」と名づけ、過去のトラブル対応を学習させた「支配人AI」などを作りました。

毎週、全店舗でこの仕組みの活用を検討する会議を開き、60代の社員やパートを含む全従業員が開発に加わっているそうです。1人あたりの月平均残業時間は、2023年の6時間49分から2025年の3時間54分に減っています。

出典:DXセレクション2026 レポート(2026年6月) — 経済産業省/「DXセレクション2026」優良事例選定のご案内(2026年5月20日) — 川六

クリーンシステム(山形県・解体工事・廃棄物処理・109名)

生成AIを使って、請求書を一括で送るシステムを約1か月で自社開発しました。請求書の発送にかかっていた年約108万円の定常的なコストを削減したとされています。

社内向けの生成AIを「ITの専門家」に見立てて、社員が自習に使える「パーソナルトレーナー」として公開しているのも特徴です。

出典:中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025(2025年3月) — 経済産業省

7社に共通していたこと

1. 必ず発生する書類仕事から始めています

月末の報告書、請求書、検査の記録、英語資料の要約などです。どれも、やらなければ仕事が止まる業務で、しかも毎日か毎月、必ず回ってきます。

白書が挙げた「活用する業務がイメージできていない」という壁は、ここで越えられています。「AIで何ができるか」から考えると、答えが出ません。「毎月いちばん時間を取られている書類は何か」から考えると、最初の1業務はすぐに決まります。

2. 経営者か後継者が、まず自分で使っています

オプトサイエンスは社長、岡田研磨は専務、ヒューマングループは経営者自身が、最初に手を動かしています。大企業のように推進部署を置く余裕がない分、トップが自分で使って「これは使える」と確かめてから広げるという順番になっています。

これは、社員に「使ってください」と言うときの説得力にもつながると考えます。自分で使っていない人の「使ってください」は、現場に届きにくいものです。

3. 共有する場を、仕組みとして決めています

エヌエスケーケーは月1回の成果報告、川六は毎週の検討会議、オプトサイエンスはプロンプトの勉強会です。岡田研磨は、若手のチームが先に試してから全社に広げました。

白書のデータでも、研修会や勉強会に取り組む事業者のほうが効果を実感しています。一人が使い込むだけでは、その人が異動したり辞めたりしたときに止まります。使い方を人から人へ渡す場を、最初から決めておくことが要ると考えます。

「いくらかかったか」について、正直に書きます

今回調べた7社で、生成AIにかかった費用の実額を公表している会社はありませんでした。

いちばん近い記述は岡田研磨のものです。白書には、同じシステムを外注すれば約8,000万円かかるところを、内製なので「AIの月額利用料のみで済み」と書かれています。ただし、8,000万円は「外注したらいくらか」という比較の数字で、実際に支払った額ではありません。月額の金額も書かれていません。

費用の数字が出てこない理由は、公表情報からは分かりません。ただ、事例を読むと、お金とは別に大きくかかっているものがあります。社員の時間です。岡田研磨の専務は、約2年で1,000時間以上をAIとの対話に使いました。この時間は、どの資料にも「費用」としては載りません。

調査で46.9%の会社が「高コスト」を課題に挙げているのは確かです。ただ、事例を見るかぎり、始める段階で大きなお金をかけた会社は見当たりません。かかっているのは時間であり、その時間を誰が出すかを決めることが、最初の判断になると考えます。

数字を読むときの注意

AIだけの効果ではない数字があります。 ヒューマングループの会議時間75%削減や、川六の残業時間の削減は、システムの刷新やDX全体の取り組みの成果です。生成AIだけで達成したものとは書かれていません。

会社の規模に対する大きさで読んでください。 エヌエスケーケーの月275分は、時間にすると約4.6時間です。大企業の「年間何万時間」と比べると小さく見えます。ただ、61名の会社で請求書処理という1つの業務から毎月この時間が浮くことは、十分に意味のある数字だと考えます。

今回の7社は、表彰や白書に選ばれた会社です。 うまくいった会社の記録ですので、同じことをすれば同じ結果になるとは限りません。途中でやめた会社の話は、公表情報からは拾えませんでした。

自社ではどう始めるか

社員数十名の会社で生成AIを始めるなら、私たちは次の3つを最初の1か月で決めることをおすすめします。

1つめは、最初の1業務です。 「毎月いちばん時間を取られている書類」を、部署ごとに1つずつ挙げてもらってください。そのなかから、やらないと仕事が止まり、しかも毎月必ず発生するものを1つ選びます。

2つめは、最初に使う人です。 社長ご自身か、後継者か、社長が信頼する1人です。その人が1か月、選んだ業務で毎日使ってみて、「これは使える」と言えるところまで確かめます。

3つめは、共有する場です。 月1回で構いません。使ってみた人が、何にどう使って、どれだけ時間が浮いたかを話す時間を、会議の予定に入れてしまいます。エヌエスケーケーのように報告を義務にするかどうかは、会社の文化に合わせて決めてください。

費用の見積もりは、選ぶサービスと使う人数で変わります。ただ、7社の事例から言えるのは、予算より先に「誰の時間をどれだけ充てるか」を決めている、ということです。

※ 記載の数値は各資料の公表時点のもので、生成AI以外の取り組みの成果を含むものがあります。最新の内容は各資料をご確認ください。

※ 本記事で紹介する事例は、各社が公表している情報をもとにまとめたものです。当社が支援した事例ではありません。

自社ではどの業務から始めるか。最初の1業務の選び方から社内への広げ方まで、レベルゼロが伴走します。

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