AI CASE
社内で生成AIが定着した会社と、しなかった会社——分かれ目は3つ

※ 本記事で紹介する事例は、各社が公表している情報をもとにまとめたものです。当社が支援した事例ではありません。 当社の実績については記事末尾をご覧ください。
「ツールは契約しました。アカウントも全員に配りました。それなのに、使う人が増えません」
このご相談を、ここ1年で何度もいただいています。導入そのものは、もう難しくありません。難しいのは、配ったあとです。
前回の記事で、生成AIを社内で使っている9社の公表データを並べました。そのとき気づいたのが、数字を出している会社は、どこも一度は「使われない時期」を通っているということです。
この記事では、そこを掘り下げます。
この記事の要点
- 日清食品グループは、導入当初に「3割の壁」を感じたと公表しています
- パナソニック コネクトの月間ユニークユーザー率は61%。前の年から12ポイント増やした結果の数字です
- 3割と6割。この差を埋めたものは何か、を公表情報から3つに整理しました
- 「しなかった会社」の事例は、ほとんど表に出てきません。この記事も、定着した会社が越えた壁から逆算しています
※ 本記事で紹介する事例は、各社が公表している情報をもとにまとめたものです。当社が支援した事例ではありません。
まず、2つの数字を並べます
日清食品グループ
2023年4月、グループ専用の対話型AI「NISSIN AI-chat」を導入しました。ChatGPTが世に出てから、かなり早い時期です。
同社の公表によると、導入した当初は利用率が上がらず、「3割の壁」を感じたとのことです。そこでデジタル化推進の部署が、社内での普及に取り組んだ、という流れが書かれています。
出典:VALUE REPORT 2025 — 日清食品グループ
パナソニック コネクト
こちらは2026年7月のプレスリリースで、月間ユニークユーザー率61%と公表しています。月に1回でも使った社員の割合です。前の年から12ポイント増えました。
同じ発表のなかで、削減時間は78.8万時間(前年の2倍)、利用回数は361万回(前年の1.6倍)とされています。
出典:パナソニック コネクト、AI活用で総労働時間の3.4%削減(2026年7月29日)
3割と、6割。 この2つを並べると、定着というものが「配った瞬間に決まる」のではなく、そのあと何年かかけて動かす数字だということが分かります。
分かれ目 1:配ったあとに「広める人」を置いたか
日清食品グループの記述で、いちばん重要なのはここだと考えています。壁にぶつかったあと、デジタル化推進の部署が普及に取り組んだと書かれている点です。
ツールを配ることと、使われるようにすることは、別の仕事です。前者は情シスの仕事ですが、後者は違います。それぞれの部署の業務を知っていて、その業務に合わせた使い方を一緒に考えられる人が要ります。
私たちがご相談を受けるとき、最初にお聞きするのは「誰が広めますか」です。ここに名前が入らない状態で導入した会社は、だいたい3割のあたりで止まります。
そして、この役目は兼務では回りません。少なくとも最初の半年は、誰かの仕事の何割かを、はっきりこれに充てる必要があると考えます。
分かれ目 2:業務を名指ししたか
数字を出している会社は、どこも業務を名指ししています。
KDDI は、報告書を作成するアプリで業務時間を約80%削減したと公表しています。月間およそ600件の問い合わせ履歴を使う取り組みもあわせて紹介されています。
西日本旅客鉄道 は、社内の運営会議に出す資料を事前にチャットへ投稿して確認してもらう運用に、AIを入れました。その結果、資料レビュー前後のやり取りが約3分の1になったとされています。
三菱UFJ信託銀行 は、リテールの事務領域に生成AIを入れ、年間6万5千時間の削減を公表しています。
出典:ELYZA Works 社内先行活用 — KDDI Business/西日本旅客鉄道株式会社様 導入事例 — KDDI Business/AIと金融はどう融合する — 三菱UFJイノベーション・パートナーズ
報告書。資料のレビュー。リテールの事務。どれも業務の名前です。「生産性向上」や「DX推進」ではありません。
業務を名指しすると、社員にとって「自分ごと」になります。「AIを使ってみてください」と言われても何をすればいいか分かりませんが、「来週の報告書、これで下書きを作ってみてください」なら動けます。
どの業務を選ぶかにも、傾向がありそうです。公表されている事例を見ると、人によって時間のばらつきが大きく、しかも毎日発生する業務が選ばれています。報告書も、資料のレビューも、事務処理もそうです。
分かれ目 3:使われ方が変わったか
パナソニック コネクトは、自社の変化を「『聞く』から『頼む』へ」と表現しています。
調べものをAIに聞く段階から、仕事そのものを任せる段階へ。同社の数字を見ると、この変化が起きたことが分かります。利用回数が1.6倍に増えるなかで、1回あたりの削減時間が33分(前年の1.2倍)に伸びています。
回数が増えただけなら、1回あたりの時間は変わらないはずです。それが伸びたということは、1回あたりに任せている仕事が重くなったということになります。
ここが、定着の最後の関門だと考えます。
「使っている人の割合」は、社内で広める活動によって上がります。しかし「1回あたりに何を任せるか」は、それぞれの社員が自分の仕事のなかで見つけるしかありません。研修で扱うべきなのは、本当はこの部分です。
「しなかった会社」について、正直に書きます
ここまで読んでお気づきかもしれませんが、この記事には「失敗した会社」の名前が一社も出てきません。
理由は単純で、公表されないためです。 企業が自社のサイトやIR資料に書くのは、うまくいった話です。日清食品グループが「3割の壁」を書いているのは、むしろ珍しいことだと考えます。
ですので、この記事の3つは「失敗した会社を調べた結果」ではありません。定着した会社が越えた壁から、逆に読み取ったものです。ここは正直にお伝えしておきます。
もうひとつ。3割で止まっている状態が「失敗」かというと、そうとも言い切れません。全社員の3割が日常的に使っているなら、それはそれで動いています。問題になるのは、3割のまま何年も動かないときです。
パナソニック コネクトは、1年で12ポイント動かしました。動いているかどうか。見るべきはそこだと考えます。
自社ではどう測るか
最後に、自社の状態を測る数字をひとつだけ挙げます。
月間ユニークユーザー率。 月に1回でも使った社員の割合です。パナソニック コネクトが公表しているのがこの数え方で、自社でもそのまま使えます。
多くの会社が見ているのは「アカウント発行数」か「総利用回数」です。しかし発行数は配った時点で決まりますし、総回数は一部の人が使い込むだけで伸びます。どちらも、社内に広がっているかを教えてくれません。
月に1回でも触った人が何%か。そして、その数字が去年より何ポイント動いたか。測るべきはこの2つだと考えます。
数字が動いていないなら、分かれ目1に戻ってください。広める人が置かれているか。その人の時間が確保されているか。だいたい、そこで止まっています。
※ 本記事で紹介する事例は、各社が公表している情報をもとにまとめたものです。当社が支援した事例ではありません。
配ったあとに何をするか。社内への広め方から定着の測り方まで、レベルゼロが伴走します。
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