AI CASE
業務の属人化をAIで解消する——「あの人しか分からない」の畳み方

※ 本記事で紹介する事例は、各社が公表している情報をもとにまとめたものです。当社が支援した事例ではありません。 当社の実績については記事末尾をご覧ください。
「あの人が辞めたら、この業務は止まります」
社内でこう言われている仕事が、いくつ思い浮かぶでしょうか。
属人化そのものは、昔からある問題です。マニュアルを作りましょう、という話も何十年と言われてきました。それでも無くならないのは、マニュアルを作る時間が、いちばん忙しい人にしか作れないからだと考えています。
生成AIが変えたのは、ここです。手順を書き起こす作業そのものを、AIに任せられるようになりました。
この記事では、公表されている事例から、属人化をどう畳むかを整理します。
この記事の要点
- KDDI は報告書の作成で業務時間を約80%削減したと公表しています
- 西日本旅客鉄道 は、会議資料のレビュー前後のやり取りが約3分の1になったとしています
- 三菱UFJ信託銀行 は、リテール事務領域で年間6万5千時間の削減を公表しています
- 3社に共通するのは、「作る時間」ではなく「やり取りの時間」を減らしていることです
- ただし、AIだけでは属人化は解けません。理由は記事の後半に書きます
※ 本記事で紹介する事例は、各社が公表している情報をもとにまとめたものです。当社が支援した事例ではありません。
属人化には2種類あります
まず、言葉を分けておきます。
ひとつは「知識の属人化」です。あの人しか手順を知らない。過去の経緯を知っているのがあの人だけ。これは、書き出せば解けます。
もうひとつは「判断の属人化」です。どの案件を優先するか、この条件は例外扱いにしていいか。こちらは書き出しても解けません。判断の基準そのものが、経験のなかにあるためです。
生成AIで畳めるのは、前者です。 そして多くの会社で、業務時間を食っているのも前者のほうです。
公表されている3つの事例
KDDI
報告書を作成するアプリを社内で先行活用し、業務時間を約80%削減したと公表しています。月間およそ600件の問い合わせ履歴をもとに、顧客のニーズを整理する使い方もあわせて紹介されています。
報告書は、属人化の典型です。同じ内容を書くのに、慣れている人は30分、慣れていない人は3時間かかる。しかも、その差が表に出ません。
出典:ELYZA Works 社内先行活用 — KDDI Business(2025年9月17日)
西日本旅客鉄道
社内の運営会議に出す資料を、事前に社内チャットへ投稿し、上司や関係者に確認してもらう。この運用がもともとあり、そこにAIを入れました。
結果として、資料レビュー前後のやり取りが約3分の1になったとされています。
ここで注目したいのは、資料を作る時間ではなく、作ったあとのやり取りを減らしている点です。「これ、どういう意味?」「この数字の根拠は?」という往復が、実は時間を食っています。しかもこの往復は、質問する側と答える側の両方の時間を奪います。
出典:西日本旅客鉄道株式会社様 導入事例 — KDDI Business
三菱UFJ信託銀行
リテールの事務領域に生成AIを入れ、年間6万5千時間の削減を公表しています。もともと生成AIを使った社内業務の効率化には取り組んでいた、という前提も書かれています。
金融のリテール事務は、手順が細かく、例外も多い領域です。そこで数字が出ているのは、手順が文書として存在していたからだと考えます。規制のある業種は、記録を残す義務があります。属人化を畳むうえでは、それが有利に働きます。
出典:AIと金融はどう融合する — 三菱UFJイノベーション・パートナーズ(2025年10月2日)
畳むための4つの手順
3社の事例と、私たちがご相談を受けてきた範囲から、順番を整理します。
1. 止まったら困る業務を挙げる
「効率化したい業務」ではなく、「その人が明日いなくなったら止まる業務」を挙げてください。この2つは違います。効率化したい業務はたいてい量が多い業務ですが、止まると困る業務は量が少ないこともあります。
挙げるのは5つまでにしてください。多いと、どれも進みません。
2. その人に、1回だけ実況してもらう
マニュアルを書いてもらうのではありません。作業しながら、やっていることを口に出してもらうだけです。録音でも、画面共有でもかまいません。
マニュアルを書く作業は、忙しい人にとって「あとでやる仕事」になります。永遠にあとになります。しかし実況なら、いつもの作業のついでにできます。
3. AIに手順書を書かせる
録音の文字起こしや、作業中のメモをAIに渡して、手順の形に整えてもらいます。ここがいちばんAIが効く部分です。
出てきたものは、必ず本人に見てもらってください。抜けが見つかります。そして、その抜けこそが「その人しか知らないこと」です。
4. 別の人に、それを見ながらやってもらう
これをやらないと、手順書は使われません。書いた側は分かっているつもりでも、他の人がやると必ず詰まります。詰まった場所を書き足す。ここまでやって、ようやく畳めたと言えます。
AIだけでは解けない部分
正直に書きます。この4つのうち、AIが担えるのは3番だけです。
1番の「どの業務を挙げるか」は、社内の事情を知っている人にしか決められません。2番の実況は、本人にしかできません。4番の検証も、人がやるしかありません。
そして、いちばん難しいのは2番です。属人化している業務を持っている人は、たいてい、それを手放したがりません。 自分の価値が下がると感じるためです。ここは技術の問題ではなく、社内の話の持っていき方の問題になります。
私たちがご相談を受けるときも、ここでつまずいている会社がほとんどです。ツールを入れる前に、「あなたの仕事を奪うのではなく、あなたが休めるようにするため」という話をどう伝えるか。そこから始めることが多くあります。
最初にやるなら、この1つ
5つ挙げるのも大変だという場合は、ひとつだけ試してみてください。
次に誰かが書く報告書を、AIに下書きさせる。
KDDIが約80%削減と公表しているのが、まさにこの業務です。報告書は、ほぼすべての会社にあります。そして「誰が書いても同じ内容になるべきなのに、書く人によって時間が違う」という、属人化の条件をきれいに満たしています。
うまくいけば、社内で話が通りやすくなります。うまくいかなければ、なぜうまくいかなかったかが、次の材料になります。 どちらに転んでも損はありません。
※ 本記事で紹介する事例は、各社が公表している情報をもとにまとめたものです。当社が支援した事例ではありません。
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